④与信限度額とは

与信限度額について考える場合、新入社員に以下のような質問をします。             

「私にお金を貸して下さい。さて、いくらなら貸していただけますか?」

「貸すお金が手元にないなら、給料日後でもボーナス後でも構わないです。」と、お金がないのを理由に貸さないという選択肢はないようにします。みんな「う~ん」と唸っていますが、何人かを指して答えを求めると、貸す相手が部門長とはいえ初対面の人間にお金を貸すのはやはり抵抗があるようです。

1番多い回答は1万円。「つまり、皆さんの私に対する信用力=与信限度額は1万円ということです。」 私としては寂しさを感じますが、皆まともな金銭感覚をもっていることに安心します。

次の質問を続けます。「では仮に、私に100万円貸さねばならないとしたら、あなたは何をしますか?」

すると、「念書を書いてもらう」とか「所有している車を担保に取る」とか、契約書や『保全』のことに言及し始めます。これもまともな感覚です。

更に、重要な質問があります。それは、1億円の資金をもっている場合と100万円の資金しかない場合では、与信限度額に変化が生じるかどうかということ。与信限度額が所有資金の100/1億を占めるのか、100万/100万となるのかでは、当然与信する側にとってリスクが違ってきます。

つまり、与信限度額を決めるには、『与信する側の財務体力』も決め手になるのです。例えば、大銀行や大商社なら1億円の損失はかすり傷かもしれませんが、中小企業にとっては大きなダメージを受け、連鎖倒産に繋がる危険性もある。そうしたリスクを避けるためには1社に過度に依存した取引は避けるべきで、1社あたりの与信限度額は自ずと制限されることになるわけです。

⇒ 正しい与信限度額とは

与信限度額を決めるには、相手の信用力に加え、
自社の財務体力も考慮する必要がある。