③そもそも与信とは

与信の重要性を理解していない営業マンは、後で痛烈なしっぺ返しをくらうことになる。

与信管理のコンサルタントを行っていると言うと、「与信? それって何?」という反応が割と多い。金融業界では空気のような概念でも、一般の事業会社においては経理や掛売が発生する営業部門以外は、馴染みが薄いのかもしれません。

私が新入社員研修で与信管理についてレクチャーする際には、以下のような話をします。

1.コンビニのレジでは…

コンビニでおにぎり1個を買うとします。レジで「すみません。今持ち合わせがないので、今月末まで待ってもらっていいですか。25日に給料が入るので、必ず返しますから。」と言って、商品を持って外に出ようとしたら、あなたはどうなりますか?

別室に連れていかれ、お説教を受けたり警察に通報されたりするでしょう。
そう、商売の基本は、お金と商品との同時交換なのです。
それによって、売り手も買い手もリスクがなくなる。
テレビドラマを見ていると、横浜埠頭あたりで1万円札がぎっしり詰まったジュラルミンのケースとやばい薬が交換されるシーンを目にしたりしますが、正に信用できない相手との取引は、この物々交換が基本です。

2.法人取引では…

ところが、法人取引においてはなぜか掛売りが常識だと思い、相手のことをろくに調べもせずに「月末〆の翌々月末現金払い」とか平気で認めてしまう。
先に商品を納めて、代金の支払いを待つのですから、納品側に100%リスクが生じるわけです。支払う側が夜逃げしたり債務不履行をおこせば、まるまる損失を被るーこれが与信リスクです。

このリスクを受け入れるためには、相手先に信用があることが前提になります。
そのための事前審査をきちんとし、この会社ならこの期間、これ位の金額を掛売りできると会社が承認する-これが与信です。漢字の意味の通り、信用を与えることです。                   
継続的な取引を行う場合、与信額の限度を決め、この与信限度額内で掛売りを行っていくということになるのです。

3.与信管理はなぜ必要? 

経済産業省の「商工業実態基本調査」によると、日本企業の営業利益率の平均は卸売業で1.1%、小売業で 2.1%となっています。仮に営業利益率が2.0%の企業の場合、1,000万円の売上をあげると20万円の営業利益が出ます。

しかし、もしこの売上が回収できずに焦げ付いてしまった場合、どうなりますか?  そう、貸倒損失が1,000万円発生してしまいます。 

この損失を取り戻すには一体、いくらの新規の売上が必要になるでしょうか?  販売するには営業経費がかかるので、仕入をベースとした粗利ではなく、営業利益を基準に考えるのが適切です。即ち、1,000万円÷2%=50,000万円、なんと5億円の新規売上が必要となるのです!

1件の回収不能(貸倒)をおこすと、取り戻すのは並大抵でないことがわかるでしょう。これを極力避けるため、与信管理が必要になるのです。

社会人になったら、掛売の意味をよく理解する必要がある。

会社が認めた取引先の信用度を示す与信限度額を守って営業活動を行いましょう。