⑧マネジメントとは

名選手必ずしも名監督ならず―ビジネスの世界でも同じです。トップセールスマンが、必ずしも優秀なマネージャーになれる訳ではありません。自分で数字をあげるスキルをもっているだけではだめで、マネージャーになったら営業マン時代とは違う能力が要求されるのです。それがマネジメント能力です。

では、マネジメントとは何でしょう?私は、日常業務の観点から一言で言い表すと、「目標達成に向けた施策を立案し、それを展開し、進捗管理をすること」だと考えています。このように一事で言ってしまうと非常に無機質に感じられますが、中身はなかなか深いものです。 

まず「目標達成に向けた施策を立案」する前には上位目標を正しく理解し、部長であれば全社目標を、課長であれば部門目標をよく理解した上でそれに紐付いた各自の目標を設定し、施策を立てなければなりません。こうした課題設定力や問題解決力は、今の中年以上の世代は学生時代に習ったことがないので、かなり苦心することになります。

 次に「展開する」ためには、部下や関係者に自身の目標や施策を説明し理解して動いてもらわねばなりません。従って、リーダーシップ、指導力、傾聴力、包容力といった周囲を巻き込み、モチベーションを向上させる人間味溢れる要素が必要となってきます。若くして頭脳明晰なタイプでもこのあたりは、なかなか一筋縄ではいかないことに悩むことでしょう。 

更に「進捗管理をする」には、緻密な期日管理と臨機応変な対応力、更には上席に対する報告能力も要求されます。例えば、部下に何か指示を出す場合、「やっておくように」と言うだけではだめで、「何をいつまでに」するのかを伝え、それが実行されているかフォローしなくてはマネジメントをしていることにはなりません。また、「徹底します」「対処します」「努力します」といった類の表現も要注意で、何も言っていないのと同じです。具体的に「誰がいつまでに何をするのか」を指示する際にも、報告を受ける際にも忘れてはなりません。

なかなかハードルの高いタスクのように感じられますが、皆さんの会社の管理職の方々は、こうした素養を身に着けておられますか?

特に販売系の会社では、売上さえあげていればマネージャーへ昇格したり、あるいは年功序列で課長や部長になったりすることも多く見られるように感じます。

部下に指示したことの進捗状況を把握して実行の支援をし、また、毎月の面談等における目標進捗に対する助言を通じて、個々の成長を促すことがマネージャーとしての重要な責務です。自分は部下を信頼しているからといって内容も把握せず丸投げしているのは、信頼ではなく放任であり、マネジメント放棄と言わざるを得ません。 

売買基本契約書は取引開始前に締結できたか、回収条件は改善できたか、取引先の与信限度額と業績数値は頭に入っているか、取引先の日常に何か気になる変化はないか、必要な増額申請や与信限度額の見直しは行えたか―営業数字を達成することは勿論重要ですが、こうした与信管理の業務を通じても、現場マネージャーがマネジメント能力を磨き、部下を成長させることはできるのです。

⇒ よくあるご質問

目標達成に向けた施策を立案し、それを展開し、進捗管理をする。

部下の目標進捗に対する助言を通じて、成長を促すことがマネージャーの責務。