新型コロナの影響-その③

1.景気の状況は

世界銀行は6月8日、新型コロナウィルスの拡大によって、2020年の世界経済の成長率が▲5.2%(終息が遅れれば▲8%)に落ち込むとの予測を発表しました。第二次世界停戦後、最悪の景気後退となります。

また、日本経済新聞社は、わが国の上場企業の2020年1~3月の最終損益が▲14,050億円の赤字(前年同期は55,120億円の黒字)となり、四半期決算では東日本大震災がおきた2011年以来の赤字になったと発表しました。 

 

2.倒産件数は

一方、同日、東京商工リサーチは、全国の5月の企業倒産件数が前年同月比54.8%減の314件だったと発表しました。上場企業レナウンの倒産があったものの、単月ではなんと56年ぶりの低水準となりました。

これは一体、どういうことでしょうか。

報道によれば、5月は新型コロナウイルスの影響で破産手続きなどを行う裁判所が業務を縮小し、手続きが先送りされた影響が大きいとのことです。

それに加えて、私は、

(1)金融機関は、取引先から返済猶予や借入申込の要請があれば応じること(2020/3

(2)銀行不渡りを2回起こしても、銀行取引停止処分にしない(2020/4

という緊急事態における金融庁の指導も倒産件数の抑制に効いているのではないかと思います。 

但し、先の(1)については、金融機関はもともと健全な取引先に対しては応じるはずですが、地方銀行の7割が減益・赤字(2020/3)である現在、これ以上貸倒引当費用を増加させることは各行とも厳しく、東日本大震災以降、金融円滑化法で生き永らえてきたゾンビ企業はもはや淘汰せざるを得ない状況に追い込まれると思います。

事実、帝国データバンクによれば、コロナ関連倒産は6月4日現在216件に達していますが、これらの多くは以前から世の中の変化に対応できずに慢性的な減収が続き、資金繰りも限界に達していました。それにコロナが追い打ちをかけ、後の見通しも立たず事業の継続を断念したというケースのように思います。

また、5月は「破産等の手続きが先送りされた」のであれば、その分今後増加するわけですし、自宅待機が解除され経済が再開されるとお互いに期日通りの正常な取引を期待するので、むしろ倒産は表面化していくものと考えられます。特に、今年の後半から来年にかけては、警戒すべきでしょう。

ちなみに帝国データバンクは、「2020年度の倒産件数は1万件に達する」という見通しを発表していますが、リーマンショック後の2009年の倒産件数が同社のデータでも1万3千件(東京商工リサーチのデータでは1万5千件)を超えていたことを考えると、第2波、第3波もおこりうるコロナに対しては、少し楽観的な見通しではないかと感じます。

 

3.取引先の変調と対応は

確かにまだ、現状では取引先の倒産は少なく、危機感は薄いのではないかと思います。

ただ、いくつかの取引先からは支払いの猶予をしてもらえないか等の相談が入ってきているのではないでしょうか。しかし、この5~6年そうしたこともなかったので、どうしたらよいかわからず、これといった対応もせず過ごしているケースもあるかもしれません。 

そのような場合、大切なことは、まず取引先としっかり向き合い、相手の状況をよく把握することです。資金繰り表をいただく等して、公的な給付金の申請・入金状況、金融機関の緊急融資の実行時期、既存の借入金の返済猶予や事務所賃貸料の支払い猶予等資金繰りの状況を良く把握し、もし公的支援策で活用されていないものがあれば助言をして差し上げるべきです。 

そのように取引先の資金繰りを把握した上で、自社の売掛金の回収について、分割弁済を認めるのか否か、認めるのであればいついくらの返済ができるのかを両社で合意し、文書で取り交わしておくべきです。その際、保全の追加や約束を破った場合のペナルティーも記載しておくべきです。そして、期日ごとにしっかり入金管理をしていくのです。

結局、こうしたことをきちんと積み重ねて行っていくことが、不良債権を作らないことにつながりますし、また、平時に戻った際には、「あのときはお世話になりました。」と取引先からも感謝されることになるでしょう。

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相手の資金繰りをよく把握したうえで、分割弁済や支払猶予を検討し、ペナルティーを含め書面で交わしておき、入金管理をしっかり行う。