⑩与信管理体制の構築とは

独立した立場で審査をする機能を設け、組織として継続的に実践できる仕組を作る。

事前審査を行い、この会社ならこの期間、これ位の金額を掛売して良いと会社が承認する-これが与信でした。

では、「与信管理体制の構築」とは何をするのでしょうか。

取引前に相手の信用力を適切に審査し、取引状況を見ながら与信額を見直し、回収遅延が発生したら迅速に対応し、結果、滞りなく回収が行われるような体制にしていくこと―「体制」ですから、1人の技術や能力に頼る属人的なものではなく、組織として継続的に実践できる仕組みにすることです。

会社によって規模感は異なり、数人で月間数十件程度について与信判断を行うこともあるでしょうし、数十人で月間数百件~数千件について行うこともあるでしょう。要はその規模に応じた最適な体制、業務の流れ、仕組を作ることが重要で、それにはある程度の人員や予算も必要になります。

小規模の企業ですと社長が全てを決めることが多いと思いますが、与信に関しては少し立ち止まって考える必要があります。数字を必達したいという営業としての立場とリスク管理の立場とが社長自身の中で利益相反を起こすことが避けられないからです。結果、無理してでも数字を追うことを選択することで取り返しのつかない損失を被る―という例をいくつも見てきました。

まず、与信の権限規程を設け、必ずしも審査部でなくても構いませんが、営業から独立した立場で審査ができる機能を作ること、そこで所定の資料や情報源を用い、客観的な判断を示し、ルールに基づいた運用を行うことで現場の暴走に待ったをかけることができます。

また、規模が大きくなると、遅延発生時の冷静な指示や注意情報の共有等、現場と本部の連携を図る機能を発揮し、早期の問題解決につながることも期待できるのです。

会社の規模によって異なりますが、本部に審査機能を設け与信管理に係る体制を構築することは、掛け売りを行う企業にとっては必須の事項といえるでしょう。それには、審査の基準は合理的であるか、回収対応を含めた管理フローが効率的であるかを都度見直していくことも忘れてはなりません。 

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